その日私は家に帰ってから、ずっと萌恵の言葉が頭に残っていた。  

【んー、友達だったらなおさらないね】

 最近桜木と一緒にいすぎて、よくわからなくなってる。私は桜木と一緒にいるのが当たり前になってるんだな、きっと。
 でも桜木が私を助けてくれたあの日、泣いている私をギュッと抱きしめてくれたあの温もりに、私は心地良さと温かさを感じていた。

「……そっか」

 あの心地良さと温かさは、桜木だから感じるものなのかもしれないんだ。
 だって他の男子には感じたことはない。 頭をポンポンと撫でられた時も、私はそんなこと感じたことなかった。

「でも……好きだって言われてないし」

 桜木と一緒にいる時間が多すぎて、単純に麻痺してるだけのような気がする。

  
✱ ✱ ✱


「おはよう、萌恵」

「真琴、おはよう」

 次の日から私は、変に桜木を意識するようになってしまい、桜木と目を合わせることがなぜか出来なくなった。

「あ、おはよう桜木くん」

「お、おはよう」

「……おっ、おは、よう」
 
「おはよう、真琴」

 桜木と目が合いビックリした私は、逃げるように自分の席に着いた。

「……はあ」

 桜木と目を合うだけで、驚くなんて……。こんなんじゃ情けない。
 でもどうしたらいいのか、わからない。

「真琴、大丈夫?」

 萌恵にそう聞かれるけど「大丈夫」と唱えるように呟いた。

「そうそう。今日の体育、バドミントンだって」

「え、バドミントン? いいじゃん」

 そんな会話をしていると、「おい、真琴」と桜木が近寄ってくる。