「もう付き合えばいいのに、アンタたち」

「でも私は、別に桜木のことを好きって訳じゃ……」

「ええっ、なんで?」

 萌恵は私の発言にビックリしている。

「なんで……ってなに?」

「私はてっきり、桜木くんのこと好きなのかと思った。いつも一緒だし」

「いや、だから私は別に……」

 桜木のことを好きとか……わからない。  でも一緒にいて、胸がときめいたり、ドキッとする時がある。

「本当はもう、自分の気持ちに気づいてたりしてね」

「えっ……?」

 萌恵は「なーんてね」と微笑み、再びお弁当を口にした。

「まあ私は、真琴が元気でいてくれないと、悲しくなるからね?」

「え?」

「真琴には笑っててほしいの」

 萌恵にそう言われて、私は「ありがとう」と答えた。  

「……自分の、気持ち」

 私は桜木のこと、どう思ってるんだろう……。そんなこと、深く考えたことなかった。
 ただ一緒に生活して、何かに苦しんで……。お互い助け合って、支えあって胃た。

 だからそれだけしかなかったし、それ以上でもなかった。……だって私たちは、友達だし。
 でも友達以上なのかどうかを聞かれても……正直わからない。
 私が桜木のことどう思ってるのかって聞かれても、わからない。 私にとって桜木は……そんなに大事な存在、なのかな。

「……ねえ、萌恵」

「ん?」

 私は萌恵に「胸がときめいたり、ドキドキするのって……男友達でもあることなの?」と聞いてみる。
 萌恵は少し考え「んー、友達だったらなおさらないね」と答えた。