でも実際に、私のそばには本物の"ヴァンパイア"がいる。
 だからヴァンパイア本当に実在するのは確かだ。

 ーーーバンパイアは人間の敵。
 いつからか人間には、そんな変な話が広まるようになった。

 ヴァンパイアは人間を噛み殺すとか、ヴァンパイアはキバが生えてるとか、ヴァンパイアは満月の夜に現れるとか。
 そんな変な話をいつしか人間は信じ込むようになったと、桜木はいつか言っていた。
 確かにどれも間違ってはいないと言っていたけど……。

 桜木もヴァンパイアだけど、桜木は悪いヴァンパイアではない。
 むしろ心の優しいバンパイアだ。

「でもさ、吸血鬼がほんとにいたら怖いよね。 だって人間を噛み殺すんでしょ?あの鋭いキバで」

「……みたいだね。怖いよね、ヴァンパイアって」

「ねぇ。 え、本当に現れたらどうする?」
 
 萌恵は私にそう聞いてくる。

「……どうするって言ってもさ、逃げるしかなくない? だって殺されるかもしれないんだよ?」

「だよね。考えただけでも恐ろしいね」

「……うん」

 もし私がヴァンパイアになったら、萌恵はどうするだろう。
 やっぱり殺されるかもしれないと思って、私を避けるのかな……。
 それとも今みたいに、私に優しく接してくれるのかな……。

 どっちみち私は、ヴァンパイアになったらきっと人間ではいられない。 人間の敵とみなされる。
 そんなこと、考えたくない。 でも今の私は、人を殺すかもしれない悪魔だ。 
 受け入れるしかなくなる。……それが現実だから。