「そうだ、今日一緒に帰ろう」

「ああ、うん。いいよ」

「よし、決まりね」

 萌恵はそのまま席に戻っていった。

 最近また桜木とは距離が近くなった気がする。
あんなことがあってから、桜木はよく私を守ってくれるようになった。
 気に掛けてもくれるし、心配してくれる。

 正直に言うと、嬉しい。 でも私は、いつヴァンパイアになるかわからない。
 だからどんなに明るく振る舞っても、心の不安は消えない。……心の不安が取り除かれることは、きっとない。

 私だってわかってる。 自分が今どうするべきなのか。
 でも……でも私は、まだ生きていたい。

 だからヴァンパイアになるのが運命なら、私はそれを受け入れるつもりだ。 自分でも、そう思うことをおかしいとは思うけど。

「……ねぇ、萌恵」

「ん?」

 私は昼休み、お弁当を食べながら萌恵に「……ヴァンパイアって、ほんとにいると思う?」と聞いてみた

「えっ……ヴァンパイア? て、吸血鬼のこと?」

 萌恵がコーヒー牛乳を飲みながら私に聞き返す。

「うん。 ほら、たまにテレビに出るじゃない?それを見てると、本当にいるのかなぁって思ってさ」

「ああ、たしかに。 うーん……でもどうなんだろうね。 いるかもしれないし、いないかもしれないしだけど」

「……だよね」

 まあ、ヴァンパイアなんて空想の中の世界にしか過ぎないし、信じる人なんて少ないとは思う。
 信じる方がレアだと思うけど、信じないよね、普通。