「……ああ、信じろ」
 
 俺は真琴の体を優しく抱きしめる。

「……ありが、とう」

「体大丈夫か? 痛いところないか?」

「……ちょっと、痛いかな。 あとはちょっと、ダルいかも……」

「そうか。……でもよかった。 意識取り戻してくれて、本当によかった」

 真琴が生きてるだけで、俺は安心したんだ。

「っ……なんか、口の中が、血の味がする……」

「ああ、多分……お前に俺の血を飲ませたからだと思う」

 真琴は「……え? 桜木の……血?」と俺を見つめる。
 
「ああ。俺の血を飲んだから、少しは楽になると思う」

「……ちょっと待って」

「なんだよ」

「どんな風に……飲ませたの?」

 そう聞かれた俺は「そんなの、口移し……」と口にしたが、すぐに話すのをやめる。

「……え?」

「あ、いや……それはその、なんだ。 俺の口から飲ませたに、決まってんだろ……」

 なんだ、この照れくさい気持ちは……。なんかよくわからない感情になる。
 やべぇ……。なんか、急にドキドキしてきた。

 さっきのこと思い出し、急に恥ずかしくなる。

「それってつまり、キス……?」

「べ、べつに、そんなんじゃねぇよ!……ただ、お前を助けたくて必死になっただけのことだ」

「……ありがとう」

「え?」

「桜木が助けてくれなかったら……私今ごろ、死んでたかもしれない。 だから桜木には、すごく感謝してる。……ありがとう」

 アイツのあんな嬉しそうな目を見たら、本当のことなんか言える訳なかった。
 アイツが真琴を狙ってるということを。