違う、アイツはたかが人間なんかじゃねぇ……。
「そうだ、あの女は俺たちの敵だ。 だって人間だぞ? たかが人間に、なんでそこまで感情的になるんだよ」
「……アイツは、アイツはたかが人間なんかじゃねぇ! アイツはヴァンパイアである俺を受け入れてくれた、たった一人の人間なんだよ。……それなのにお前は、なんの罪もねぇ人間をこんな風に傷付けたんだぞ?」
真琴をこんな風に傷付けたコイツを、俺は絶対に許さない。
「人間はみんな敵だ。敵なら殺して当然だ」
「……ふざけんな。 俺さっき言ったよな?アイツに指一本でも触れたら、お前を殺すって」
「フッ……本当にそんなこと出来るとでも思っているのか。愚かだな」
愚かか……。確かに俺は愚かかもしれない。
だけど俺は、そんな真琴のことを助けたいんだ。
アイツだけは……助けたいんだ。
「っ……てめぇ、本気でぶっ殺すぞ」
「フッ……まぁせいぜいもがけばいいさ。 この女が死ぬ姿を見届ければいい」
「ふざけんな! アイツはぜってぇ俺が死なせねぇ」
死なせてたまるかよ……。
「フッ……お前はつくづくバカだな」
「なんだと? バカなのはてめぇだろ」
「何度でも言えばいい。俺はお前が憎い。……だがまだ、生かしといてやる」
「ふざけんな! 次は絶対に殺す」
「お互い様だな」
くっそ……。真琴は大丈夫なんだろうか。 ひどくケガをしている。
「ああ、一つだけ言っておく。 あの女にヴァンパイアの血は飲ませたが、死んだりはしない」



