【sideユズル④】



「……俺を恨んでるヤツ、ね、」

 そんなの数多くいるからわからねぇしな。見当もつかない。
 俺は一体どうすればいいんだ。……かといって、アイツに迷惑はかけたくない。

 苦しませたくねぇし、傷つけたくねぇ。 でもどうすればいいのかわからなくて、ただただ頭を抱えるしかない。

「俺を恨んでる人物。俺を傷つけようとしてる人物……」

 思い当たるヤツはいるが、多すぎてわからない。

「……あーくそっ」

 そんなのわかる訳がないだろうが。

「なんなんだよ。ちくしょう……」

 そう思っていた時、スマホが鳴り始めた。 だが通知は、非通知だった。

「……もしもし」

「桜木ユズルだな」

「……誰だお前。なんで俺の番号知ってる」

 俺がそう話した時、電話の向こうから「お前の大事な人間女を拉致した」と言われた。

「……なんだと?」

 真琴を拉致した……だと? ふざけんな……。

「返してほしければ、今すぐここに来い。そこで待ってる」

「くそっ……!」

 気が付いた時には、俺は走り出していた。 無意識だった。

「……ここか」

 俺は指定された場所へと走り続け、勢いよくその場所の扉を開けた。

「ようやく来たか。……待ってたぜ、桜木ユズル」

「……誰だ、お前」

「忘れたとは言わせねぇぜ。 あの時お前は、俺の弟を殺したんだからな」

「……っ!?」

 殺した……? 俺がコイツの弟を、殺した……?

「……お前の弟を、俺が?」

「ああ、そうだ。 お前は……俺の弟を噛み殺したんだよ!」