「……ふん。勝手にしなさい!ただし私は、諦めないわよ」

「勝手にほざいてろ」

 桜木はそう言い放ち、そのまま私の方向に向かって歩いてきた。
 出来れば……逃げたかった。今すぐにでも、この場から逃げだしたかった。
 なのに……逃げられなかった。 足がすくんで、動けなかった。

「……真琴!? お前、なんで……なんでここにいるんだよ?」

 桜木が私に気付き、そう声をかけてくる。 だけど私は、何も言えなかった。

「まさか……聞いてたのか?」

「……桜木、どういうこと?」

 私がそう聞くと、桜木は「……それは」とはぐらかす。

「っ……説明してっ! 今の話はどういうこと?」

 私は冷静じゃいられなかった。 だって桜木が私のためにあんなことを言ったのではないかと思っているから。

「……聞いてたんだな」

「はぐさかさないで説明してよ!どういうことよ? ねえ桜木、答えないよっ……!」

 私は思わず桜木の胸ぐらを掴んだ。

「……どういうこともなにも、お前が聞いた通りだ。それが全てだ」

 それが全て……?

「ふざけないでよ……。冗談はやめて! 私が聞いたのが全てだって!?……アンタ、ふざけるのもいい加減にしてよね」

 なんで……なんで私は、こんなに怒るのだろうか。  

「……だよな。悪い」

「ねえ、答えて。私を殺すってどういうこと?……仲間ってなに?」

「……大体はお前の聞いた通りだ。 俺はあの女に、仲間になれって言われたんだよ。仲間にならなきゃお前を殺すって……そう脅されていた」