「……とりあえず、逃げなきゃ」

 だってここにいたら、今の話聞いてたのバレちゃう。 でも、足が動かない……!

「ああ、わかってる。じゃあな」

 電話を切った桜木が、私の方に振り返る。 そして驚いたように目を見開き、私を見た。

「あれ、金森さん……だっけ?」

 でも何事もなかったように口調を変える。

「……ねぇ、今の話、どういうこと?」

「なんの話かな?」

「とぼけないでくれる。……それとその口調、気持ち悪いからやめてくれない?」

 私がそう伝えると、桜木は「もしかしてさっきの話、聞いてた?」と私に聞いてくる。

「イヤでも聞こえてきたのよ。 それより、さっきの話はどういうこと?」

「……ここじゃなんだから、別のとこで話そうか」

「そうだね、それがいいかもね。 アンタは聞かれたくない話だろうし」

 私は桜木を連れて、近くの空き地へと向かった。

「ここなら誰も来ないでしょ。……さてと、一体どういうことか話して」

「……わかった。 まぁバレちったもんは、仕方ねぇからな」

 桜木は近くのベンチに座り込む。

「それより、一体どういうことか説明して? アンタ一体何者なの?」

「俺が何者かって?ーーー吸血鬼(ヴァンパイア)だ」

「……ヴァンパイア?」

 ウソでしょ……。あれってやっぱり、本当?
 コイツ本当に……"吸血鬼(ヴァンパイア)"なの?

「俺は吸血鬼(ヴァンパイア)だ。見た目は人間だが、心と中身は、吸血鬼そのものだ」