「え……なにが?」

「だって桜木くんと結構仲いいじゃん、真琴。 私はてっきり、桜木くんと真琴が付き合ってるのかと思ってたもん」

「はあ? そんなわけないでしょ」

 確かに私たちは付き合ってはいない。 だけどなぜかキスはした、二回目も。
 だけど私は、桜木のこと実際にどう思ってたんだろう。……キスだってしちゃった訳だし、いつも一緒にいたし。

 確かにに旗から見たら、私と桜木と付き合ってるように見えたかもしれない。 でも実際は違う。
 私たちは付き合ってはない。……それにお互いそんな気持ちで見てたのかさえ、未だにわからない。

 少なくとも私は、桜木のこと嫌いではない。 桜木といるとそれなりに楽しいし。
 桜木をヴァンパイアだと知った時、色々な事情を知った。 桜木がヴァンパイアに狙われた時だって、私が桜木を助けた。

 助けた理由なんかなかった。 ただ自然と体が動いていただけ。
 だけどもし、あの時私が桜木を助けなかったら、桜木は今ごろこの世界にはいなかったかもしれない。 だから桜木を助けてよかったと本当に思う。
 ただ今は、桜木の考えてることがわからないせいか、少し苦しくなる。 そして胸が切なくなる。

 桜木は今なにを考え、なにを思っているのだろうか。 桜木があんなに感情を表に出すことなんて今までなかった。
 ましてやあんなに冷たい態度をとることだってなかった。……なのに今の桜木は、感情を露にするくらい不機嫌になっている。

 なにか理由があるのかもしれないけど、今はそっとしといてあげるほうが、桜木のためにもいいんだと思う。