「ていうか……私のファーストキス、だったんだけど」

 初めてのキスがまさか、桜木とだなんて……。

「はっ? ファーストキス……?」

「う、うん」

 桜木は「はあ……」とため息を吐くと、「おい、真琴」と私の名前を呼ぶ。

「……ごめん、怒ってる……?」

 私がそう聞き返すと、桜木は「別に怒ってない。普通にビックリしただけだ」と言っていた。

「お前の初めてのキスが、俺なんかでごめんな」

 桜木にそう言われた時、私はなぜか胸がチクンと痛たんだ気がした。
 それがなぜなのかは、自分でもわからない。

「違うの。……桜木だから、良かったの」

「……え?」
 
 私は桜木の制服の袖をギュッと掴んだ。 そして桜木の目を見つめる。

「真琴、そんなに見つめると……」

「え……なに?」

 だけど答える間もなく、今度は私の唇が桜木の唇で塞がれていた。

「んっ……っ」
   
 そのキスはさっきのキスとは違う、男の人の強引さがあった。
 ゆっくり唇が離れると、桜木は「さっきの仕返しな」と言った。

「仕返しって……ひどい」

 まさか二回目もキスすることになるなんて……。

「ひどいのはどっちだ。 勝手に俺の唇奪ったのは、お前だからな」

 でも桜木はちょっとだけ嬉しそうに笑っていた。

「っ……桜木のバカ」

 バカなのは私も同じか。 だって友達って言ったのに、キスしちゃったし。
 あんなこと、するつもりなかったのにな……。

「まあ、結局お前も俺もバカってことだな」

 ……そうかもしれない。