「確かにアンタにとって私は、ただの人間でしかないと思う。 でもね、アンタにはちゃんと人間の心がある。だからアンタには、人間の気持ちがわかると思うの」
「はっ……?」
桜木は私を見ながら「何言ってんだ、お前……」と呟く。
「アンタはきっと、他の人間なんかよりも何倍も優しさがあると思うんだよね」
「……そんなの、単なる憶測だろ」
桜木はそう言うけど、私はそう思わない。
「私はそうは思わない。 アンタが人間でも、そうじゃなくても」
「……真琴、お前ってバカなのな」
そう言って私の前から立ち去ろうとする桜木の腕を、私は「桜木、ちょっと待ってっ……!」と思わず掴んで引き止める。
「真琴……?」
「……桜木の言うとおりだね」
「え?……っ!」
私は桜木の制服のネクタイを引っ張ると、顔を近付けて桜木に自らキスをしていた。
それは私の無意識の行動だった。 自分でも予想もしていなかったことだったんだ。
なんでそんなことしたのか、自分でもわからないのが困るくらいに、不思議な行動だった。
「なっ……お前、何してっ……」
もちろん、桜木が驚くのもムリはない。
「ダメ……だった?」
って……私はなんてことを聞いてるんだ。 桜木の唇を勝手に奪っておいて、ダメだった?と聞いている。
桜木に「キスしてもいいか」という確認をせずに、勝手にキスをしてしまった。
これはまずい……。
「……そういうのは、好きな男とするものだろ」
私にそう言う桜木だけど、桜木の顔は少しだけ赤くなっていた。



