結局その後はなにもなかったし、起こらなかっ た。
でも桜木が辛そうな顔をしていたことには、触れないでおこう。
「……桜木」
「ん?」
「ちょっといい?……話があるんだけど」
私は桜木に話がしたいと申し出てみた。
「……話?」
「うん」
私は桜木を裏庭へと連れて行った。
「なんだよ、話って」
「……あのさ、私になにか出来ることない?」
「は? 出来ること?」
そんな桜木に私は、「アンタを助けるために、私が出来ることって何かない?」と聞き返す。
「……なんだよ、突然」
「アンタの命が狙われてるっていうのに、黙って見てる訳にはいかないでしょ。……アンタの助けになれるのは、唯一私だけなんだから」
黙って見てることも、今の私にとっては苦痛でしかない。
「気持ちはありがたいんだけど……お前に出来ることは何もない」
桜木にそう言われたのが悔しくて、私は「どうして……? アンタ、自分が危険な目に遭うかもしれないんだよ?」と思わず言い返してしまった。
「……ふざけんな。人間のお前になにが出来るってんだよ。 いいか、人間のお前に出来ることなんて、何もない」
「そんな言い方、しなくたって……」
「俺だって、自分の命が狙われてるってことくらいわかってる。……でも仕方ねぇだろ。今人間の姿であるこの俺に、出来ることなんかないんだから。 俺だって焦ってんだよ」
「桜木……ごめん」
「……わかってんだよ、俺だって」
私、桜木のことなんにもわかってなかった……。



