【sideユズル➀】



「なあ、悪いんだけど調べてほしいことがあるんだ」

「ああ、なんだ」

 俺はヴァンパイアの世界の友人に連絡を取り、「今こっちの世界にいる、俺以外のヴァンパイアを調べてほしい」と伝えた。

「……何かあったのか?」

「実はついこの前から、誰かが俺を狙ってるみたいなんだ。 この間からずっと、強い血のニオイがしてる」

「血のニオイ……? 本当か?」

 連絡を取っているのは俺の友人である榊原《さかきばら》だ。

「ああ、しかもすげぇ強力な血のニオイなんだ。……だが誰が俺を狙ってるのかがわからねぇ。 だから調べてみてくれねぇか」

「わかった。 にしてもなんで、お前がこっちにいるってわかったんだろうな」

 それは俺が一番知りたいことだ。 なぜ俺のことを知っているのか……。  
 どうやって俺のことを突き止めたのかが分からない。

「わからねぇ。 だがそいつが俺の命を狙ってることは確かだ。 だからなるべく早く調べてほしい」

「わかった。 なんかわかったら、また連絡する」

「ああ。頼んだぞ」

 俺は電話を切り、ため息をつく。

「……桜木、アンタなにしてんの?」

「え?」

 真琴が俺に話しかけてくる。

「ここは携帯電話は使用禁止よ。 貼り紙見なかったの?」

「そうなのか。知らなかった」

 本当は知っていたけど。

「ったく……今度から図書室で携帯は使っちゃダメだからね」

「ああ、わかった」

 真琴は俺に「それより、なにかわかった?」と問いかけてくる。

「いいや。何もわからないままだ」