桜木という転校生が挨拶をしただけで"きゃああああああ!"と女子たちのテンションが上がっている。

「席は……そうだな」

 キョロキョロと辺りを見回す先生。 そして先生と目が合ったのは、私だった。

「……えっ?」

 ウソッ……。まさか……?

「じゃあ桜木は、金森の隣に座れ」

「ええっ……」

 やっぱり……。やっぱり私?
 たしかに席空いてるけど、でもでも……!

「はい」

 そして近づいてくる桜木という名の転校生。

「よろしくお願いします」

「……うん、よろしくね」

 と軽く挨拶をした。

 だけどこの転校生がまさか"吸血鬼(ヴァンパイア)"だったなんて、この時の私にはわかるはずもなかった。
 そう、見た目は一見普通の人間にしか見えなくて。

 だけどその心と中身は、人を噛み殺す"吸血鬼(ヴァンパイア)"なんだ……。
 そんな吸血鬼に目をつけられることなるなんて、全く別の世界だと思っていた。
 私の人生、どうしたらいいんだろうか……。



「ねぇねぇ桜木くん」

「アドレス教えてー!」

「どこから来たのー?」

 う、うるさい……。

「真琴、ご飯食べよ」

「ああ、うん」

「今日は屋上で食べよう」

「うん」

 萌恵とお弁当を持って屋上へと移動する。

「にしても桜木くんって、カッコイイよねぇ。芸能人にいそうだもん」

「萌恵、彼氏いる分際でなに言ってんの? 彼氏いるんだからそんなこと言っちゃダメだって」

「でももちろん、彼氏が一番だけどね」