力ずくで倒すって……。

「そんな無茶な……」

「お前らに危害を与えたくないからな。……特に、お前にはな」

 そう言った桜木が私を見る。

「……え?」

「お前は俺が"ヴァンパイア"だってことを、唯一知ってる人間だ。 だからお前だって、危害が加えられるかもしんねぇからな」

「……ええ。そんなのごめんなんだけど」

「だろ? だからお前には危害が及ばないようにしないと、お前に悪いだろ?」
 
 まあ、安全に暮らしたいのは確かにあるから、何もない方がいいんだけど……。

「……確かにそうよね」

「とにかく、誰かがお前を狙ってくる可能性もなくはない。だからお前も今から、少し用心しといたほうがいい」

 私は桜木から忠告を受けて「……わかった。あたしも様子見てみるね」と答えた。

「ああ、頼む。俺は俺を狙ってるのが誰なのか、少し調べてみる」

「わかった。くれぐれも、ムリはしないでね」

「ああ。……真琴、お前は俺が守ってやるからな」

「……はっ?」

 守ってやるって……私を? 桜木が……?

「だからお前は、俺を信じろ」

「……信じろって、言われても」

 得体の知れないヴァンパイアを信じろだなんて、すぐにはムリだと思うけど……。
 まあでも、私自身も自分の身に何かが起こるのは困るから、用心はしないと。

「とにかく今は、様子見るしかねぇな」

「そうだね。 あたしも少し警戒するようにするよ」

「ああ、頼む」

 とりあえず桜木の事情はわかったし、なんとかするしかないかもな……。