夫婦になった私たちは、お腹の子の誕生を心待ちにしていた。
「さ、帰ろうか、真琴」
「うん」
私はユズルとともに生きることを決めたからこそ、乗り越えてきたものがあると信じている。
✱ ✱ ✱
あれから時は流れ、臨月を迎えたある日のことだった。
ソファから立ち上がろうとすると、急にお腹が痛くなり動けなくなってしまった。
「……い、たいっ………痛いよ……っ」
あまりにも痛すぎて泣きそうになった。 座り込んでても痛くて、どうしようもなかった。
「ただいまー。……え、真琴、大丈夫っ!?」
帰ってきたばかりのお母さんがしゃがみこむ私に駆け寄る。
「お母さん、お腹が、痛いっ……」
「大変……! 陣痛が始まったのね。 すぐ病院へ行きましょう!」
お母さんは慌てて準備を始める。
「っ……痛いっ……」
そっか。これが、陣痛なんだ……。ということはつまり……もうすぐ産まれるってことなの?
「い、痛いよお……。お母さん、どうしよう……」
「大丈夫よ。すぐに病院へ行きましょう。 恐らく陣痛が始まってるから、出産準備に入るかもしれないわね」
「痛いっ……お母さん、痛いっ」
お母さんは「大丈夫よ、真琴。お母さんがついてるから」と手を握ってくれる。
「お母さん、どうしよう!……う、産まれそう、かもっ……!」
「いきんじゃダメよ、真琴! 力を抜いてっ!」
「そ、そんなこと言われても……。お母さん、もうダメかもっ!」
いきんじゃダメだと言われたのに、いきんでしまって、急に産まれそうな感覚になってしまう。



