「なあ、真琴……?」
桜木と手を繋いで歩いていく。
「うん、なに?」
「夫婦になったんだから、俺のことはユズルって名前で呼べよ」
「え……?」
確かによく考えたら、私は桜木のことを下の名前で呼んだこと、一度もなかった。
お母さんはユズルくんと呼んでいるけど、私はずっと桜木と呼んでいたので、呼ぶのに少し照れがある。
「今日からユズルって、呼んでほしい」
「え? は、恥ずかしい……!」
ものすごく照れる。 ユズルという名前を呼ぶのにちょっと抵抗がある。
「ほら、ユズルって呼んでみろ」
「ゆ、ユズ、ル……」
は、恥ずかしい……。
「もう一回言って」
「ゆ……ユズル……」
照れるけれど、ユズルと呼んでみる。
「もう一回」
「ええっ、もう、恥ずかしいから無理っ!」
私は桜木の手を離すと、恥ずかしさから手で顔を覆う。
「名前で呼ばれるって……いいな」
「……え?」
「やっぱり真琴にユズルって呼ばれるの、嬉しいものだな」
桜木がそんなことを言うものだから、私も「うん……私も嬉しいよ」と微笑む。
「ユズル、これから夫婦として、よろしくね」
「ああ、よろしく」
お腹の赤ちゃんももうすぐで産まれる。 ユズルには学校があるし、なんとか卒業してほしい。
「赤ちゃん、早く会いたいね」
「そうだな。……俺も早く会いたい」
大きくなったそのお腹を抱えながら、私とユズルはお互い見つめ合う。
「もうすぐで、会えるね」
「楽しみだな」



