「桜木くん、図書室行くんでしょ?」

「ああ、うん」

 昼休みになり、私は桜木に「着いてきて。案内するから」と歩き出した。

「ありがとう」

 とりあえず桜木を図書室へと案内する。

「桜木、ここが図書室だよ」

「ありがとう、金森さん」

 私に向かってニコッと笑う桜木。……いや、吸血鬼(ヴァンパイア)男。

「あのさ、今図書室には誰もいないんだから、もう普通にしたらどう?」

「そうだな、それが一番だな。それにこれのが楽だし」

 やっぱり猫かぶってると、妙に気持ち悪いわ。

「あたし、朝からずっと思ってたんだけどさ……アンタってほんとに猫かぶるのがうまいよね」

「そうか?」

「ええ。つくづく感心するわ」

「ふっ……まあ俺だからな」

 やっぱり私、コイツのこと嫌いだわ。……はあ、出来ればもう関わりたくはない。

「……じゃああたし、教室戻るからね」

 私は図書室のドアに手をかける。

「……なあ、真琴」

 なのに桜木に名前を呼ばれる。

「え?……今度はなによ?」

 桜木の方に振り返ると、桜木は表情を変えていきなり「俺さ、血のニオイを感じたんだ」と言い出した。

「え? 血のニオイ……?」

「ああ。すげぇ強い、血のニオイを感じる」

 私は桜木に「……それって、どういうこと?」と聞き返す。

「……この学校の中に、俺の敵がいるってことだ」

「敵……?」

「つまり俺がここにいるってのを、その何者かが突き止めたんだろう。……そいつはきっと、俺を狙ってる」