「お母さん、ケーキ冷蔵庫にしまってくるから、ゆっくりしてなさい」
「うん」
私は部屋に入ると「退学届、さっき出してきた」と桜木に伝えた。
「そっか」
桜木は「今日まで、お疲れ様」と私を抱き締めてくれた。
「……ん、ありがとう」
こうして桜木に抱き締めてもらえると、本当にホッとする。
「ごめんね、桜木にも迷惑かけて」
「そんなこと、気にすんな」
桜木は私の頭を撫でてくれる。
「だって……私とは別れたってことにしてるんでしょ?」
「ん? ああ」
「別れた理由とか、聞かれなかった?」
桜木は「もちろん、聞かれてはいるけど……フラレたってことにしてるから、それ以外は何も聞かれないかな」と言ってくれた。
「……そっか。 なら、いいんだけど」
「真琴が気にすることじゃない」
「だって……別れたってことにさせないといけないなんて、心が痛むし」
本当はこうして一緒にいれるのに、別れたということにしないとならないなんて……。
なんていう胸が痛むことなのだろう。
「真琴はそんなこと、考えなくていいんだよ。 今は子供のことだけ、考えていればいいんだ」
桜木は私の髪の毛をグシャグシャと撫でる。
「もう、髪の毛グシャグシャになるから……」
髪の毛を手ぐしで直すと、桜木は「真琴……ずっと、これからも愛してる」と熱いキスをくれる。
「ん……私も、愛してる」
誰かをこんな風に愛おしく思うのは、初めてだった。 私は桜木のことを本当に愛してる。



