桜木が私と一緒に住んでいることを知っているのは、先生と教頭先生、校長先生、そして萌恵と学年主任の先生だけだった。
  クラスメイトの子たちは、桜木と私が付き合ってることは知っている子たちが多かったため、私のことを聞いてくる子に対しては「別れた」ということにしているとのことだった。

 お母さんもそれがいいと話してくれたから、桜木には迷惑かけるかもしれないけど、別れたと貫き通すことになった。

「真琴、何ケーキがいい?」

「どうしようかな……。フルーツタルトとか、いいかも」

「いいわね、美味しそうね」

「うん」

 ケーキを三人分購入してくれたお母さんと一緒に、お店を出た。

「明後日検診よね?」

「うん」

 辛いつわりに耐え抜いてからの日々は、なんだか新鮮な気持ちになれた。
 好きなものがまた食べられるようになって、本当に良かったと思えた。

「明後日、付き添えなくてごめんね」

「ううん、大丈夫。 一人で行けるから」

 桜木にも本当は来てほしいけど、桜木には学校を卒業するという試練があるので、休ませる訳にはいかない。
 単位を落とすと卒業出来なくなるし、やっぱり桜木には学校に集中してほしい。

「気を付けるのよ」

「うん、わかってる」

「さ、ユズルくんが待ってるわ。 早く帰りましょう」
 
「うん」

 私たちはケーキが崩れないようにゆっくりと家に帰った。

「ただいま」

「真琴、お母さん、おかえりなさい」

「ユズルくん、ただいま」

 家ではすでに桜木が帰っていた。