「先生……今までお世話になりました」 

「金森、体には気を付けてな。 元気な子供、産むんだぞ」

「はい。ありがとうございます」

 つわりも無事に治まり安定期を迎えた頃、私はそのタイミングで学校を退学した。

「先生、真琴がお世話になりました」

 退学する日、お母さんも一緒に学校へ来てくれた。

「お母さん、金森のこと、よろしくお願いします」

「はい」

「先生、どうもありがとうございました」

 私はお母さんとともに学校を出た。

「真琴、本当に良かったの?」

「うん……大きいお腹じゃ、学校にも行けないし」

 すでに私のお腹は少し大きくなっている。 

「そう……」

「お母さん、ありがとう」

「え?」

「ここまで育ててくれて、ありがとう」

 私は子供が出来て初めて、お母さんの偉大さを知った。 お母さんが女手一つでここまで育ててくれたことの意味をちゃんと理解したし、今ではとても感謝している。

「真琴……」

「私、お母さんの娘で良かった」

 私はお母さんの腕を取り、「お母さん、帰りにケーキ買って帰ろう」と微笑んだ。

「そうね。ケーキ、買って帰ろうか」

「うん」

 私が学校を辞めることは、クラスメイトにも伝わっている。 ただ辞める理由を「家庭の事情」という風に先生も伝えてくれているので、妊娠のことは話されていない。
 先生も話すつもりはないと言ってくれた。

 桜木はとりあえず先生や私たちと話し合った結果、一旦は学校を卒業することを決めた。