「あの、今日はどうしたんですか……?」
私はグレープフルーツを先生から受け取ると、先生にそう問いかける。
「金森の様子が気になってな」
「……そうですか」
「少し痩せたか?」
「そんなことは、ないと思いますけど……」
確かに食べれるものは少ないけど……。
「桜木が言ってたぞ」
「……え?」
「金森がつわりで辛そうな顔をしてるのが、見てるのが辛いってな」
桜木……先生にそんなことを言ってたんだ。
「出来れば、代わってやりたいと言っていたぞ」
「桜木が、そんなことを……?」
先生は「多分、桜木は金森のことが本当に大事なんだろうな。 そばにいるのに何も出来ないのが辛いって、そう言ってぞ」と私に告げた。
「桜木は金森とお腹の子が心配なんだろうよ。 産むのは金森だから、俺には出来ることが少ないって嘆いてたぞ」
「そうなん、ですか……?」
「俺も金森には、元気な赤ん坊を産んでほしいと思ってるよ。……一教師として、大事な生徒には幸せになってほしいと願ってる」
先生がそう言ってくれるから、私は泣きそうになった。
「先生な、俺がもし桜木の立場だったら……って考えたんだけどさ」
「はい」
「俺には桜木みたいに、きっと父親になる覚悟なんて、なかったと思うんだ」
先生は麦茶を喉に流し込むと、「だから俺は、桜木のその決意はすごいと思ってる。 もちろん、金森の決意もだ」と話してくれた。
「先生……」
「俺は金森と桜木が幸せなら、それでいいかなって思う」



