今こうして、私の中で小さな生命が動いている。
生きたいと、頑張っているから。

「……ね、桜木……?」

「なんだ?辛いか? あ、水でも飲むか?」

「ううん……。ありがとう、本当に」

「え……?」

 私は桜木に「桜木の、おかげだよ。……こんなにも大変だけど、ちゃんと幸せになりたいって。心から、そう思うの……」と伝えた。

「……ああ」

 優しく握ってくれた手は、とても優しくて温かい。そんな手だった。

 それからしばらくは体調に気をつけながら、生活をしていた。

「真琴、学校行けそう?」

「……無理っ」

「わかったわ。 ゆっくり休みなさい」

 つわりが治まるまではムリなことはせず、お母さんや桜木に協力してもらいながら、一日を過ごすことにした。
 つわりがひどくて動けない時が多いけど、それでもなんとか生きている。

「お母さん……つわりっていつ治まるの?」

「まだまだ先よ」

「ええ……辛い」

 お母さんは私に「母親になるんでしょ? 頑張りなさい」と告げる。

「うん……」

 いつまでこのつわりに耐えればいいのか、わからない。

「グレープフルーツジュース、帰りに買ってきてあげるから」

「んんー……」

 つわりで辛い中、お母さんは「ごめんね、真琴。 お母さん、もう仕事行かないとなの」と部屋を出ていく。
 
「行ってらっしゃい……」

 お母さんを見送ることも出来ず、ベッドの中で辛さに耐える。

「……はあ、辛い」

 お腹空いてても何も食べられない。