先生は私たちにそんな温かい言葉をくれた。
「……先生、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「もちろん、このことは教頭や校長には話をさせてもらう。……いいな?」
私たちは二人で見つめ合い「はい」と頷いた。
「とりあえず、今はまだ誰にも、何も話すなよ」
「……わかりました」
先生は「気を付けて帰れよ」と美術室を出て行った。
「真琴……大丈夫か?」
「私たち……認めてもらったってことで、いいのかな」
私がそう聞くと、桜木は「多分……な」とだけ答えた。
「……良かった」
なんだかホッとしてしまった。
「ああ、良かったな」
桜木は私を優しく抱き寄せる。
「……私、絶対に産みたい」
「ああ、俺も産んでほしい」
こうして二人で過ごせる時間を、大切にしたい。
「頑張って、家族になろうね」
「家族……?」
「そう、家族。……お互いに十八歳になったら、籍を入れて家族になろう」
桜木は「そうか……家族か」と呟く。
「私は……桜木と家族になれたら、本当に嬉しいよ」
「……ありがとう、真琴」
「桜木、大好きだよ」
「ああ、俺も大好きだ」
私たちはお互いちょっとだけ照れ臭そうに、微笑みあった。
それからしばらくして、桜木は正式に家に住むようになった。 だけど私はその頃からどんどんつわりがひどくなっていって、食べ物を受け付けることすら出来なくなっていた。
まともに食べられるのが、ヨーグルトやゼリーだけだった。



