先生は再び口を開く。

「お前たちはまだ未成年なんだぞ? 子供を育てることがどれだけ大変なことか、わかっているのか?」

「それでも私は……この子を産みたいんです! この子の命を見捨てることなんて……出来ないです」

 私は唇を噛みしめる。 

「金森……お前は母親になる覚悟があるのか?」 

「……あります。 私は絶対に、この子を産みます。この子を大切に育ててみせます」

 私は先生に訴えかけるように見つめた。

「はあ……俺もお前たちが付き合っていることは知っていた。 付き合うのは自然なことだから仕方ないとしても、妊娠ってのは……」

 先生も驚きを隠せないのだろう。

「先生……ごめんなさい」

「え?」

「いい生徒じゃなくて、ごめんなさい」

 私は先生に頭を下げた。

「先生、俺もごめんなさい。……いい生徒じゃなくて、ごめんなさい」

 なのに桜木も、私と一緒に謝ってくれた。

「……二人とも、顔を上げろ」

 私たちは二人とも顔を上げた。

「お前たちの意思はわかった。……金森、桜木」

 私たちは二人で「はい」と返事をした。

「お前たちはまだ未成年だ。 だけど、二人で話し合って決めたことなら、俺は応援する」

「……え?」

 それは先生からの思ってもない言葉だった。

「……本当に、いいんですか?」

「お前たちは未成年だ。 だけどお腹の子の両親だろ?……お前たちが産むと決めたのなら、俺はその決意を尊重しなければならない」

「先生……」

「生徒の気持ちを尊重し理解するのが、俺たち教師としての役目だ」