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 その次の日から、桜木は家に越してきた。 一緒に住むことを条件に、お母さんは産むことを認めてくれた。
 正直、吸血鬼の子供を産もうとするなんて……バカなのしれない。
 それでも、私は桜木と一緒に生きていきたい。本当に本気でそう思っているんだ。

 お腹の子と三人で、幸せになろうって言ってくれたのは、桜木からだった。        
 こんなにも、本気でぶつかって来てくれた人は初めてだった。
 だから私は、必ず幸せになる。お腹の子と桜木と、三人で。

「あの、先生」

「ん? 金森、どうした?」

 私はお母さんに言われた通り、先生に妊娠のことを話すことにした。

「私、先生に話したいことがあります」

「話たいこと?」

「ここだと話しづらいので……一緒に来てくれませんか?」

「お、おう。 わかった」

 私は先生を連れて美術室へと向かった。

「桜木? 桜木も一緒だったのか?」

「はい」

 先生は私たちに「二人してどうした? 何かあったのか?」と聞いてくる。

「先生……私、先生に言わないといけないことがあります」

「……なんだ?」

 私は先生に「先生、私……妊娠してるんです」と告げた。

「……え?」

「私のお腹の中に……赤ちゃんが、います」

 先生は少し考えて「金森、それは本当か?」と聞き返してくる。

「はい。……今、妊娠七周目です」

 私は先生の反応を見る。

「金森、もしかして、お腹の子の父親は……」

 先生は少し離れたところにいる桜木に視線を送る。 桜木は静かに口を開き「……はい。俺です」と伝えた。