ピーンポーン……と真琴の家のチャイムを鳴らすと、゙はーい゙と声がした。
  でもその声は、真琴の声じゃない。

「はーい。どちら様……」

  真琴のお母さんは、俺を見た瞬間に悟ったのか、怒りを含めた声で「あなたに用はないわ。お帰りください」と言った。

「待ってください!……お願いします。真琴と話をさせてください」

「あなたに話すことなんてないわ。帰ってちょうだい。……それから、真琴には二度と近付かないでちょうだい」
 
 そう言われた後、ドアを閉められてしまった。 クッソ……!

 どうすれいいんだ、俺は。 このまま何もできないまま、終わるのか……?
 俺はスマホを取り出し、真琴に電話をかけた。呼び出し音が聞こえてしばらくして、真琴の声が聞こえた。

「……はい」

「真琴?俺だけど……」

「うん……どうしたの?」

 俺は真琴に「窓の外、見れるか?」と伝える。
 
「……ちょっと、待ってて」

 真琴がカーテンを開けて、窓から俺を見る。

 真琴は悲しそうな顔で、俺を窓越しに見つめていた。

「……桜木、ごめんね」

 電話越しに聞こえる、真琴の震えた声。

「なんで、謝るんだよ?」

「一緒に暮らそうって言ってくれたのに、叶えられなくて、ごめん……。赤ちゃん、産んであげること、出来なくてごめんね……」

 真琴の震えた声が本当に切なくて、俺まで泣きそうになる。

「何言ってんだよ! 俺はまだ、諦めてなんかないからな!」

「……え?」

「さっき、お前の母さんに、二度とお前に近付かないでくれって言われた。 でも俺、絶対に諦めない。必ずお前の母さんに認めてもらえるように……俺、頑張るからさ」