【sideユズル⑧】


「……もしもし」

  電話に出た真琴の声は、ひどく落ち込んでいた。
 今朝、真琴のお母さんから真琴が一週間くらい学校を休むと連絡があったらしい。

「真琴、大丈夫か……?」

 真琴は死んだような声で「……うん」と、頷いた。

「学校に、真琴が一週間後くらい学校休むって連絡があったみたいだな」

「……お母さんが、しばらく休みなさいって」

「そうか……。つわりは、大丈夫か?」

 この前、すごく気持ち悪いって泣きそうになったいたから、すごく心配だった。 

「……大丈夫、だよ」

「そっか。 あんまり、ムリするなよ」

 真琴がこんなにも元気がないのは、初めてかもしれない。
 いつも真琴は元気に「桜木!」と笑ってくれる人だったから。

「……うん、ありがとう」

 俺は今、とてつもなく真琴に会いたい。 真琴をこの手で抱きしめたい。

「なあ真琴、少しだけ会えないか?」

 俺がそう聞くと、真琴は泣きそうな声で「……ごめん。もう桜木とは会うなって……お母さんに言われたから」と俺に告げた。

「……え?」

「……あのね、私一週間後に、中絶しないといけなくなっちゃった」

「えっ!?」

 中絶……!?

「病院で、手術受けるの。 お腹の子、産めないんだ……ごめん、じゃあね」

 真琴はそう言い残して電話を切った。 でもきっと、今頃泣いているに違いない。
 そう思うと、足が勝手に走り出していた。 すぐにでも、真琴のお母さんに認めてほしいて思ったから。
 真琴のこと、ちゃんと話したいんだ。