私に……この子を守れるのだろうか。 ちゃんと、この子を守ってあげられるかな。

「お願いだから、わかってちょうだい。……ね、真琴」

「……っ」

 現実を受け入れるのが、こんなに辛いことだとは思わなかった。
 この子を産みたいなんて、簡単に言っちゃいけなかったんだ私は……。

「……つわり、辛いでしょう? 少しの間、学校休みなさい。お母さんから学校に連絡しておくから。辛いときは、寝ていなさい」

 お母さんはそう言うと、食器をシンクに置いて、そのまま仕事へ行ってしまった。
 
「なんで……。なんでダメなの……?」

 吸血鬼の子供だから産んじゃダメだって、お母さんは言うけど……どうしてダメなの?
 
「っ……悔しいっ」

 私はこの子のお母さんなのに、私にはそんなことを決める権利もないの? 
 私がまだ未成年だから、決められないの……?

「っ……ごめんね、ごめんねっ……」

 私はお腹に手を当ててひたすら泣いた。 大好きな桜木との間に出来た、大切な宝物なのに……。   
 その宝物を失うのは、イヤなんだよ。

 お母さんに言われたとおり、その日は学校を休んだ。 でもずっと部屋から出ていない。 
 カーテンを開けることもなく、ただベッドに横になっていた。 もう何も考える気力もない。

 夕方、私のスマホが突然鳴り出した。 電話してきたのは桜木だった。  

「……桜木」

 出るべきか悩んでしまう。 私たち、このまま終わるの……?
 もう本当に、終わりなの……? そんなの、絶対にイヤだよ……。