「……っ」

 私はお母さんの言うことを聞くしかないと思った。 お母さんが唯一の家族だから。
 唯一、私のことを理解してくれてる大切な家族。 お母さんを失えば、私は今度こそひとりぼっちになると思った。

「……ごめんね、赤ちゃん」

 私はお腹に手を当てて、この中にいる小さな命に静かに呟いた。
 産んであげられなくてごめん。私のところに来させてしまって……ごめんね。

「……っ……」
 
 あまりにも残酷な現実に、涙が止まらない。 こうなってしまって、本当に後悔している。
 そう言われても仕方ない。 これは当然の報いなんだ。
 私への罰。 自業自得とは、まさにこういうことを言うんだな……。
 あまりにも辛くなって、私は思わず家を飛び出してしまった。

「真琴っ!?どこに行くの!? ちょっと、待ちなさい……!」

 お母さんの声が聞こえたけど、振り向くこともなく、走った。……当然、行く宛なんてないのに。
 その辺をフラフラと歩いた。もうなにも考えられない……。私は近くの河原に座り込んだ。

「真琴……!?」

「……っ、桜木……?」

 どうして? どうしてこういう時、一番会いたくない人に会ってしまうんだろう……。

「何してるんだ? って……どうしたっ!?」
 
 桜木は私の顔を覗き込む。

「お母さんに……。お母さんにね、桜木と別れなさいって、言われた……」

「え……?」

「お腹の子も、堕ろしなさいって言われたの。……産むこと自体、反対されちゃった」