お母さんは厳しい口調でそう放つと、リビングを出ていってしまった。

「お母さん、待ってっ……!」

 私はお母さんを追いかける。

「あなたに恋人がいることは、知っていたわ。 恋人がいることに対しては反対はしていなかった。……でもまさかその恋人が、吸血鬼だなんて……あなた一体何を考えてるの?」

「っ……桜木はそんな人じゃない! 確かに吸血鬼だよ!?……でもちゃんとした人間の心を持ってる、とても優しい人なの」

 桜木のことを好きになってわかった。吸血鬼だとしても、ちゃんと人間として生きられるって。

「たとえ人間の心を持っていても、吸血鬼だってことに変わりはないでしょ!? あなたはいつか死ぬかもしれないのよ!?危ないことに巻き込まれたらどうするの? もし命を狙われたりなんてしたら……!」

「……っ」

 お母さんの言うことは正しい。私もバカなことを言ってるってわかってる。
 だけど、桜木のこと好きだから離れたくない。

「そういえばあなた、この間ケガをしてたわよね? あれも……その吸血鬼と関係があるのかしら?」

「そ、それは……」

 ずっと一緒にいたいってそう思ってるのに、吸血鬼と人間だっていう壁が、私たちを支配する。
 どうしたってそこは、抜け出せない……。

「やっぱりそうなのね。 そんなに危険な目に遭ってるのなら、なおさら認める訳にはいかないわね」

「お母さん……」

 やっぱり、認めてくれないか……。

「いいわね、真琴。その人とは別れてちょうだい。後、お腹の子は堕ろしてもらいますからね」