「え? 吸血鬼(ヴァンパイア)って……アンタ、まさか……」

「……ごめん、お母さん。私が好きな人は人間じゃないの。……吸血鬼(ヴァンパイア)、なの」

 お母さんは私の言っていることを理解しているのかは、わからない。
 だけど、ちゃんと話した。

「え……どういうこと、なの? じゃあその子の父親は、吸血鬼ってこと……?」

「……うん。私のお腹の中にいるのは……吸血鬼の子供なの」

 私が言っていることは普通じゃない。そんなことはわかっている。

「まさか、そんな……。なんで、なんであなた、吸血鬼なんかと……どうして?」

 だって仕方ないじゃない。 桜木のことが大好きなんだから……。

「……好きなの。 私は、桜木のことが大好きなの。私は桜木のことを人間として、好きになったの」

 お母さんは「……真琴、人を好きになることは悪いことじゃない。 だけど吸血鬼なんかダメよ。危険な生き物なのよ? いい?今すぐその人とは別れなさい」と厳しい口調で言ってきた。

「え……?」

「お母さんは、吸血鬼なんかと付き合うことは認めません。……それとお腹の子も、堕ろしなさい」

「……え? 堕ろす……?」

「吸血鬼の子供産んだとして、あなたはどうするつもりなの?……まさかその人とずっと一緒にいられるとか、そう思ってる?」

「……違う。そんなこと思ってない……!」

「だったら今すぐに別れなさい。 お腹の子には申し訳ないけど、中絶してもらうわ。お金は全部お母さんが払うから。……ただし、吸血鬼なんていう危険な生き物との関係は絶ちなさい」