顔も頭も分からない小さな命だったけど、確かに感じた。 小さな鼓動を。

「妊娠してること、親には……?」

「……まだ言ってない」

「そっか」
 
 私は再びオレンジジュースを一口飲んだ。その先、なんて言ったらいいのかわからなくて……。

「真琴は、これからどうするつもりだ?」

「わかんない。……とりあえず、親には話さないとと思ってるけど」

 お母さんは絶対、怒るに決まってる。 産みたいと言ったところで、反対するに決まってる。
 私はまだ未成年で、働いてる訳じゃないし……。この子を産んで育てていくなんて、私には出来るのかな。

「親に言うなら、俺も一緒に……」

「だめだよ。そんなこと、させられない」

「どうして……?」

「だって……桜木に迷惑は、かけられない」

 これは私たち親子の問題だ。 そこに桜木を付き合わせる訳にはいかない。

「何言ってんだよ。俺のせいでこうなったんだぞ。迷惑も何も、ないだろ……」

 桜木はそう言うけど、私はもうこれ以上、桜木に迷惑かけるのがイヤなんだ。

「だって私ば吸血鬼゙の子、妊娠してるんだよ!? 親にそんなこと……言えると思う?」

「……ごめん」

 私ってば、最低だ……。

「私の方こそ……ごめん。言い過ぎた」

「……いや、俺こそごめん」

「私は……こんなこと、言うつもりなかったの」

「いいんだ。気にするな」

 桜木に対して、私は失礼なことを言ってしまった。……申し訳ない。

「……桜木は、どうしてほしい?」

「俺も……まだよく、分からない」