「……ていうかさ、アンタ」

「ん?」

 私は桜木に「見た目は人間だけど、心と中身はヴァンパイアって言ったよね……?」と問いかける。

「ああ、そうだけど?」

「なら人間としてのアンタと、ヴァンパイアとしてのアンタ……どっちが本当のアンタなの?」

 私は桜木にそう問いかける。

「確かに見た目はどう見たって人間だよ? でも中身がヴァンパイアなのなら、人間としての感情はあるわけ?」

「……感情?」

「そうよ。ヴァンパイアとしての血が濃いなら、人間としての感情なんかあるわけ?」

 そもそもこの人は人間じゃないのに、人間として生きることなんて可能なのだろうか。

「わかんねぇなぁ。……まあでも、あるんじゃないかな」

「なによ、それ」

 ても桜木は、私に「でも俺には、その"感情"ってのがわからない」と私を見る。

「ええっ?……まあ、そうよね。だってヴァンパイアなんだもんね。わかんなくて当たり前だよね」

 そう割り切るしかできないよ、もう。

「まぁ人間としての生き方とかがわかるようになれば、その"感情"ってのがわかるようになるかもしれないけどな」

 感情ね……。それって必要なのかな。

「……べつにムリに知ろうとしなくてもいいんじゃない。 だってアンタは、普通の人間じゃないんだし」
 
 なんせ"ヴァンパイア"だからね。

「あのな、そんな何回も俺のこと批判するなよ。まるで俺が変なヤツみたいじゃねぇかよ」

 桜木がそう言うから、私はつい「変なヤツみたいじゃなくて、変なのよ」と言葉を返してしまった。