「……ごめん。お前こと、やっぱり心配で」
「どうして……来なくていいって言ったのに」
「これは俺にも責任があることだろ?……放っておくなんて、出来ない」
私は桜木に「……場所、変えよっか」と告げた。
私たちは病院の近くにある、カフェへと入った。
入店すると「いらっしゃいませー」と店員さんの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
私たちは一番奥の席に、向かい合うように座った。 座ってから、少し沈黙が続く。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「紅茶………いや、オレンジジュース二つください」
「かしこまりました」
女性の店員さんは、そのまま厨房へと消えた。
「真琴、どうだった?」
「……やっぱり、妊娠してた」
そう告げると、桜木は「……そっか」とお絞りに視線を落とす。
「お待たせいたしました。オレンジジュースになります」
目の前に二つオレンジジュースが置かれる。
「……妊娠してるって分かったから、紅茶から、オレンジジュースに変えてくれたんだね」
「妊婦は、カフェインとか、ダメなんだろ?」
「……調べたの?」
「まあ、一応……」
これは桜木なりの、気遣いなのかもしれない。
「……今、六週目だって」
「そっか」
「……うん」
私はオレンジジュースを飲み始める。
でもそれ以上、何も言えなかった。 確かに私はお腹の中に、小さな命を感じた。
本当に、赤ちゃんがいるんだと感じた。



