何も言えずにいる私に、桜木は「真琴。……ちゃんと病院へ行こう」と言ってきた。

「え……?」

「ちゃんと病院へ、行こう」

「……でも」

 知るのが怖い。……知りたくなんてない。

「……お腹の子のことは、俺にも責任がある。 だから、ちゃんと調べてもらおう」

 私は「……病院には行かない」と告げた。

「はあ? なんで?」

「……病院には、一人で行く」

 桜木に迷惑掛けたくない。

「俺も一緒に行くよ」

「いい。……一人で行くから、大丈夫」

 私は再び一人で歩き出した。

 桜木にこれ以上、迷惑をかけたくない。もし本当に、私が妊娠しているとしたら……。
 産むべきかどうかさえ、分からない。

 私の妊娠は普通の妊娠じゃない。……妊娠しているのは、吸血鬼(ヴァンパイア)の子供なのだから。

「どうすれば、いいの……」

 妊娠しているという事実を知ったら、お母さんはなんて言うだろう。
 しかも妊娠しているのは人間の子ではなく、吸血鬼の子供だ。

「……言える訳、ない」

 お母さんになんて、言えるわけない。……一人で、病院へ行こう。

 翌日、私は学校へ行くフリをして、病院へと向かった。
 結果を知るのはとても怖いけど、逃げてはいけないと思った。

「金森真琴さん、診察室へどうぞ」

「……はい」

 でもどんな結果になったとしても、私は逃げない。  
 しばらくして診察が終わると、そこには……。

「……真琴」

「え、なんで……?」

 なんで……? どうして桜木が……?