「言っただろ?俺に逆らったらこの女を殺すと……忠告したはずだ」

 私は拳を握りしめて「やめて!」と叫んだ。

「真琴……?」

「私はどうなってもいいっ! どうなってもいいから、桜木には手を出さないで」
 
 私は男に「そういう約束でしょ?」と確認する。

「おい……何言ってんだよ、お前?」

 桜木が驚いたような顔で私を見る。

「……聞き分けのいい女だ。 ますます気に入った」
 
「やめろ! コイツに触るな!」

 桜木が私の前に割って入ってくる。

「桜木……」

「退け、桜木ユズル」

「退かない。コイツには指一本触れさせない」

 桜木はそう言って私を抱きしめる。 抱きしめる力に、ぎゅっと力が込められた。

「退けと言ってるんだ。……まさか、また死の淵を彷徨いたいのか?」

 男の言葉に桜木は怯むことなく「……好きにすればいい。殺したきゃ殺せよ!」と叫んだ。

「何言ってんの、桜木……!?」

「……俺は所詮吸血鬼だから、死んだっていい。 でも真琴、お前は違う。お前にはたくさんの人間という存在がいる。 俺たちみたいな吸血鬼のように生きたらダメだ」

「イヤだ……。私は桜木がいい。 桜木と一緒に生きるって決めたのっ!」

 勝手なこと言わないでよ!

「真琴。俺みたいな男はお前を幸せには出来ない。それは、俺が吸血鬼だからだ。 俺はいつかお前を殺すかもしれないんだぞ?」

「それでもいい!……桜木と一緒に生きたい。死ぬなら一緒に死ぬ!」

「……っ!」

 私は桜木に無理矢理キスをした。 私はやっぱり、桜木が好きだと改めて感じた。
 やっぱり、桜木じゃないとダメ。ダメなんだよ、桜木……。