アイツが吸血鬼じゃなかったら即ぶっ殺してた。
 ていうか吸血鬼って、アニメやマンガだけの話かと思ってたけど、違ったのね。
 まさかほんとにいるなんて……。最初は信じてなかったけど、あれは信じざるを得ない。

 だってあれだけ"吸血鬼(ヴァンパイア)"だって言い張ってるわけだし。
 まあでも、見た目は完璧に人間だし……。 
 
 はあ……。いや、今日のことは全部聞かなかったことにしよう。アイツがヴァンパイアだってことも、アイツと不注意でキスしちゃったことも。
 全部なかったことにしよう。……うん。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 翌日、また今日もいつも通りに学校へと向かう。

「……はあ」

 なんか昨日のことが全然頭から離れない……。できることなら、夢なんじゃないかと思いたい。
 でも……夢なんかじゃないんだよね。 

 だってあたし、昨日アイツの秘密知っちゃったし。それにアイツと"キス"までしちゃったし……。
 夢であってほしいよ、すごく。 でも秘密を守るって約束したから、自然に接してあげないとヤバイよね……?
 不自然に思われたくないし、疑われたくない。

「おはよう、金森さん」

「……っ!」

 今あたし、背筋が凍るんじゃないかって思うくらいビックリした。

「ちょっと、いきなり話しかけないで!ていうか馴れ馴れしいから、学校ではなるべく話しかけないで。……わかった?」

「なんで?俺どキズまでした仲なのに?」

「……それ以上言うと、どうなっても知らないわよ」

「わかった。ごめんね」

「……はあ」

 もう……なんか色々と面倒くさい。