【sideユズル⑦】



「ん……んっ……?」

 目を覚ますと、遠のいていた意識が少しずつ戻ってきた。 あれ、ここは……。 

 え? 真琴……!?

「……桜木?目が覚めたの? 大丈夫?体、痛くない?」

「……お前、なんで……?」

 真琴は目が覚めた俺に「よかった。……もう、大丈夫だからね。 ゆっくり休んでね」と微笑みを向ける。

「っ……俺は、そんなこと、聞いてるんじゃねぇ……よ」

「……怒ってるの、桜木?」

「あ、たり前、だろ……。俺のために……そこまで、する必要なんて、ないだろうが……」

 俺は痛い体をゆっくりと起き上がらせる。

「あ、起きたらだめだよ。 まだ安静にしてないと……」

 俺は真琴に向かって「お前って……本当に、バカだな」と伝えた。

「……桜木だって、バカでしょ。一人で無茶して」

「なあ……なんでアイツの言いなりになるんだよ」
 
 俺がそう聞くと、真琴は「それは……」と口を紡ぐ。

 口を紡いだ理由なんて、大体想像がつく。 きっと、俺のためだ。
 俺のこんな姿を見て、辛くなったに違いない。

「俺のため……なのか?」

「……そうじゃない」

「え?」

「……私のため」
 
 そう呟いて下を向いたアイツは、震えていた。
きっと……ムリしてるんだ。
 本当は自分のためじゃない。 俺のためにそうしてるはずなのに……。

「……私、死にたくないの。 私は人間だから、吸血鬼じゃないから。……もうこんなことに巻き込まれるのは、もうイヤなの」

「真琴……本当にごめん」