「……とりあえず今の話は全部、内密にする。だからあたしを殺したりなんてしないでよね」

「わかってる。まあお前が約束を守るならな」

「だから守るわよ!」

 そんな私に、桜木は「よし、じゃあそんなお前に褒美をやる」と私の顔に近付く。

「はっ?ーーーんっ!?」

 それはほんの一瞬の出来事だった。

「なっ、なにす……なにすんのよっ!」

「だから言ったろ。"ご褒美をやる"って」

「……っ!」

 なっ……なななっ……!
 
 あ、あたし……。あたしあんな吸血鬼男とき、キスしてしまった……!

「さっ……サイテー!」

 ひ、人の唇を勝手に奪うなんて、信じられない!

 人としてサイテーよ!ありえないっ!

「なんだ。もしかしで初めでだったのか?」

「う、うるさいっ!……いい?それ以上言うと、アンタの秘密バラすからねっ!」

「……わかった、なにも言わない。 ただこれだけは言わせろ」

「な、なによ」

「お前のファーストキス、奪えてサイコーだったわ」

「なっ……!」

 こ、コイツ……!
 あたしのことからかうなんて、百年早いんだけど!

「なーんてな」

「……アンタほんとに殺してやろうか」

「悪かった。ちょっと調子乗りすぎた」

「わかればいいわ。 今度あたしの唇奪ったら、アンタほんとに殺すからね」

「わかった。もうしない。約束する」

「……ふん。もう帰る」

「はっ??」

「安心して。アンタのことはぜーったいに誰にも言わない。言うつもりもないから。……じゃあね」

 あたしはそのまま家へと帰った。 にしてもまさかアイツが吸血鬼だったとは……。
 見た目は人間のくせにやることは卑怯だ。