【sideユズル⑥】



「……ん……。ん……?」
 
 ここは、どこだ………? 頭がガンガンして、重たい。
 なんで俺はここにいるんだ……? ここは、どこなんだ……。
 周りを見渡してみても、真っ暗な部屋で何もない。
 しかも俺の体は、鎖で繋がれていて、身動き一つとれない状態になっていた。

「……どうなってんだ? なんで俺はここに……」

 クッソ………。頭がガンガンして、何も思い出せ ない。
 なんでここにいるのかさえ、思い出すことができない。

「ん……? なんだ、これ……」

 俺の腕に、注射器を刺したかのような跡が残っていた。 見覚えのない、針の痕だ。まだ新しい。

「クッソ……。頭がいてぇ……」

 なんだこの香りは……。頭痛がするくらいに、クソ甘ったるい香水のニオイが部屋中に広がっている。

「……なんだ、このニオイ……」

 それだけじゃない。 甘ったるいニオイに混じって、ふいについてくる血のニオイ。

 間違いねぇ……。俺だけじゃなく、他にも誰かいるな。
 恐らく俺と同じヴァンパイアだ。 しかし、ニオイはするが正体は見えないままだ。

「……あら、目が覚めたの?」

 甘ったるい女の香水のニオイと同時に、カツカツとヒールの音が俺に近づいてくる。
 ……誰だ、この女は……?

 俺が知ってるヴァンパイアじゃない。……コイツは、人間なのか?
 それとも……ヴァンパイアなのか?

「ふーん……あなたよく見ると、結構いい男じゃない?」」

 なんだ、突然……。

「あなたには私たちに協力してもらうわ。 イヤとは言わせない」