「なんだ?なんか不満でもあんのか?

「……あ、あたしを食べるってことは、つまり……」

 そういうこと……だよね?

「なんだよ?」

「つまり、あたしを……殺すってこと?」

 私がそう聞くと、桜木は「はあ?バカ言うな、殺さねぇよ。 殺すわけねぇだろ」と私に言った。

「でも今、あたしのこと食べるって……」

「あのな、今のはそういう意味じゃねぇよ。 今のは噛み殺すじゃなくて、お前の血を"吸う"って意味だっての」

「……へっ?」

 血を吸う……? な、なんだ……。

 あたし殺されないんだ、よかった……。ほんとに殺されるんじゃないかって思ったからビックリした。

「なんだ。殺されるとでも思ったのか?」

「……な、なわけないでしょ。 もしあたしを殺すとしたら、絶対あたしの意識失わせてから殺すでしょ?」

「あのな、俺はたしかに吸血鬼だ。 けどな、そんな殺し方はしない」

「じゃあどういう殺し方するの?」

「……それは秘密だ」

 秘密……? なんで秘密なの?

「なにそれ」

「安心しろ。すぐにお前を殺したりはしない。 まあ俺がヴァンパイアだってことを誰かに喋ったら、その時は殺すかもだけどな」

「……わかってるわよ。別にそんなこと、誰にも言うつもりはない。ていうか言えないでしょ」

 そんなこと言ったら、瞬く間に噂が広がって大変なことになる。