俺は交換条件として「その代わり……俺達に今後一切、二度と近づかないと約束しろ」と伝えた。

「いいでしょう。その条件、飲みましょう」

「交渉成立だな」

「では、あなたの血を分けてください」

 俺は血を注射器にとり、少し抜いた。 そして黒幕であろうアイツに手渡した。

「では、交渉成立です。……ご苦労様でした」

 アイツはそれだけ言うと、ニヤリと微笑み、そのまま姿を消した。

「クッソッ……」

 俺はこんな守り方でしか真琴を守れない自分に、新底腹が立った。
 アイツを守るって約束したのに、こんなにも傷付けて……。 
 俺は、アイツのことを守れなかった。守るって約束したのに……。守るのにこんなに傷付けたら、意味ねえだろうが。

「……さく……らぎ?」

「真琴……? 大丈夫か!? しっかりしろ!」

 真琴は俺の手を握り「ありが……とう」と微笑んだ。

「え……?」

「来てくれて、ありがとう……。うれし、かったよ……」

「真琴……ごめんな。 傷付けて、ごめん……」
 
 俺は涙が溢れて、止まらなかった。

「泣かないでっ………私なら、大丈夫、だから」

「真琴……ごめんな」

 真琴は今ある精一杯の力で、俺を抱きしめてくれた。離さないように、ギュッと抱きしめてくれた。

 その時、俺の携帯が鳴った。

「もしもし?」

「ユズル、無事か?」

「ああ、なんとかな」

「で、血は渡したのか?」

「ああ、血は渡した。……なあ、解毒剤急いで持ってきてくれないか?」

「解毒剤?」

「真琴が……黒幕の男に血を飲まされた」

「なにっ!?」

「……頼む、持ってきてくれ」

「あ、ああ……わかった」