【sideユズル⑤】

  

 俺は意識を失った真琴に、キスをした。
 そして首筋に牙で少し甘噛みし、血を吸い取り、俺の血を飲ませる。

「……頼む」

 頼む……効いてくれ……。

「おい、お前の狙いは俺だろ? なんでこんなことをするんだよ!」

 男は「この女は囮だよ。 お前を呼出すためのな」と笑った。

「……囮? それだけのためにコイツを……コイツにこんなひどいことをしたのか?」

 真琴の顔には切り傷もある。 割れた瓶の欠片があることを考えると、真琴はこの欠片で顔をケガしたってことだろう……。
 俺の大事な真琴にこんなことをするアイツらを、許す訳にはいかない。

「いやー随分威勢のいい女だったな。 俺に生意気な口を聞いていたぞ」

「ふざけんなよ。コイツは人間だぞ? 赤の他人だろっ! こいつまで巻き込むなんて……どうかしてる」

「そいつは用済みだ。 俺の女になることを断ったからな」

「……はあ?」

 用済み……だと? 何を言ってるんだ?

「俺の女になればここから出してやるって行ったんだが、コイツはそれも断ったよ」

「は……?」

 俺は真琴を見る。 真琴、お前……無茶しすぎだろ。

「……お前の望みはなんだ」

「俺の望むものは、お前の血だよ。 最強の吸血鬼(ヴァンパイア)、桜木ユズル」

 そんなに俺の血がほしいなら……。

「……分かった。 俺の血なんて、いくらでもくれてやるよ」

「ほう?」 
 
「俺の血がほしいんだろ? だったら好きなだけくれてやるさ」