朦朧とする意識の中、半開きの目で見たのは桜木の姿だった。
「てめぇ……真琴に何をした?」
「……ケホッ……」
「真琴に何したんだって聞いてんだよ!!」
桜木は、男の胸倉を掴む。
「何って……゙キズしただけだよ」
「なっ……なんだとっ!?」
「あ、そうだ。 お前の女に俺の血を飲ませた」
男がそう言った瞬間に、桜木が「なんだと……?」と男を睨みつける。
「お前の女は、後一週間以内に死ぬぞ」
「……っ!? てめぇ……!!」
私は声を振り絞り「さく、らぎ……っ」と口を開く。
「真琴!? 大丈夫か、おい!!」
桜木が、椅子に巻き付いたロープを解いてくれる。 そして力強く抱きしめてくれる。
「……はぁ、私のことは、いいから……っ」
「おい、しっかりしろ! 真琴!!」
「はあ……また、来るの、遅いよ……」
桜木は私を抱きしめながら「済まない。……遅くなって」と言ってくれた。
「……わ、たし、もうダメかもっ……」
意識が段々と薄くなっていく。
「何言ってんだ! 俺が助けてやる!」
あれ……。なんかおかしい。
「なんか……血の味が、濃くなったような……気がする」
「え? 血の味……?」
私の言葉が聞こえていたのか、男は「ほう……。こんなに早く効き目が出るとは、以外だな」と怪しく笑っている。
「お前だけは……絶対に許さない。真琴になんの恨みがあるってんだよ!」
「言っておくが、お前の血を飲ませてもこの女は助からないぞ」
「クッソ……真琴、必ず助ける。……待ってろよ」
そして私は、意識を失ったーーー。



