「……そうね。そうかもしれない」

「分かってるじゃないか」

「でももし、私も死ぬとしたら、私は最後に桜木と一緒に死ぬ道を選ぶ。……もしアンタの女になることが生きる道だとしても、私は桜木と生きることを絶対に選ぶ」

 男は私の髪の毛に触れると「ふっ、まだそんなことを言ってるのか。 ヤツにはもう未来はない」と嘲笑う。

「だったら……私がその未来を変える」

「……腑抜けたことを」

「腑抜けてなんてない! 例え私が死ぬ運命だとしても、その最後の瞬間まで……私は絶対に桜木と生きることを選ぶ!」

「……おい女、それ以上喋ると、本当に殺すぞ」

 男は私にナイフの先端を向ける。

「……いいわよ。やれるもんならやってみなさいよ。 私は絶対負けない」

「人間ってのはつくづくバカな生き物なんだな。 吸血鬼のためにそこまでするなんて」

 私はそう言われて「違う……」と言い返した。

「吸血鬼なんかじゃない!桜木は、れっきとした人間よ。アンタみたいにクズな吸血鬼よりずっとマシなんだからっ! 心だって人間だし、体だって人間よ! 人間としての、ちゃんとした生き方を持って……くっ……くる、しっ……っ」

 私は男に首を締められてそれ以上、何も喋れなくなった。
 苦しくて、今度こそ本当に死ぬかもしれないと思った。

「っ……」

「死ねっ……!!」

 もうダメだと、もう死ぬんだと思った、その時……。

「やーめーろー!!!!」

「ガハッ……ケホゲホッ……っ」

「真琴に手ぇ出すんじゃねえっ!!」

 桜木が来てくれた……。

「さく……ら、ぎっ……?」