なんとかして桜木を守りたい。  私が守ってもらったんだから、今度は私が桜木を守る番だ。

「じゃあそうだな……まずは」

「え……な、何するつもり?」

  そして男の顔がどんどん近づいてきて、その瞬間……。

「な、何すっ……んっ……!?」

  男の唇が、私の唇を強引に奪っていく。

「ん、んんっ……っ」

  抵抗したいのに、縛られていて出来ない。

  やだ……。桜木、助けてっ……。

「……っ!?」

 その瞬間、口の中に何かが流れ込んできた。 それは血のようだった。
 口の中に鉄の味がした。

「ゲホッ、ゲホッ……っ」

 な、なんなの……。何を飲ませたの……?

「今、何したの……?」

「何って……キスだ」

「そうじゃないっ!……今私に、何か飲ませたでしょ?」
 
 男は「俺の血を飲ませた」と言うと、続けて「ああ、言うの忘れた。俺の血を飲んだものは、一週間以内に死ぬぞ」と笑った。

「えっ……!?」

「よかったな。これで二人一緒に死ねるな」

 ……コイツ、マジで最低。

「アンタって……マジでクズ……」

 気力を振り絞り、口を開く。

「あ?」

「本当に、吸血鬼って……クズばっかり」

「……なんだと?」

 私は「吸血鬼だろうがなんだろうが、私には関係ない! 私は一人の人間として、桜木のことを好きになったの。……アンタたちみたいなクズと、一緒にしないで!」と男を睨みつける。

「ふん……所詮吸血鬼は吸血鬼だ。 人間みたいな生き方など出来る訳がないだろう」