「俺の女になれば、人生は安泰だぞ? 一生好き勝手遊んでられるし、何一つ不自由のない生活が出来ると言うのにな?」

 そう言って男は、ニヤリと怪しく笑う。

「そんな生活……私は望まない」

「人間ってのは欲望の塊で出来ているから、嬉しくないわけないと思うが……まあいい」

 私は「アンタ、桜木に指一本でも触れたら、私が絶対に許さないから」と伝えるが、男は「そんなこと言えるのも、今のうちだな」とナイフを見つめている。

「………」

 コイツは一体何がしたいの? 私を誘拐して、桜木を誘き出す作戦とか言ってた。
 それって一体、どういうこと……? なんの目的があって、そんなことを?

 私は一体どうしたらいいの? このまま、殺されてしまうのかな……。

 突然男の携帯電話が鳴ると、男は電話を出た。

「なんだ。見つかったのか?……そうか。ここに連れて来い。ヤツの女もここにいる」

「……っ!?」

 えっ……。もしかして、桜木……!?

「ああ。 いいか、ヤツの女には手荒なマネはするなよ。エサなんだからな」

 そう言って男は電話を切った。

「よかったな。お前のだーいすきな桜木ユズルも、捕まったみたいぜ?」

「えっ……!?」

 コイツ、桜木に何するつもりなの……? まさか、私と一緒に道連れにするつもり……?

「ま、二人仲良く死んでもらうから安心しろな」

「やめてっ! 私はどうなったっていいから!……だから、桜木にだけは手を出さないでっ!」