「桜木、お待たせ」

「おう」

 私たちは色々あったけれど、無事に付き合い始めた。 萌恵には「ようやくかあ。もう、付き合うまで長すぎ!」と待ちくたびれたと言われたけど、喜んでくれた。

 あれから二週間くらいは平和な日々が続いていた。
 何事もなかったのように、毎日淡々と時間が進んでいった。

 萌恵も少しずつだけど、前みたいに明るさを取り戻していった。
 本当に少しずつだけど、前の萌恵に戻ってくれているので私も嬉しい。

「萌恵、今日ってバイト?」

「あ、うん。そうなの、ごめんね」

「ううん、頑張ってね」 

「ありがとう。じゃあ、二人仲良くしてね!」

「あ、ちょっと!」

 もう……。でも萌恵が現気になってくれたことは、本当に良かった。
 しばらくかなり落ち込んでいて、二週間くらい学校へ来ていなかったし。
 あの時は本当に心配したけど、今はバイトに打ちこんでいるようだ。

「じゃあね、桜木」

「本当に送らなくていのか?」

 桜木からそう聞かれたけど、いつも通ってる道なので「うん、ここで大丈夫。 ありがとう」と桜木に「バイバイ」と手を降って歩きだした。

 しかしその帰宅途中に、事件は起きたーーー。

「んんっ……!?!?」

 私は誰かに後ろから口を塞がれた。 なんとかここから逃げようと抵抗したけど、薬がついていたせいか、そのまま意識を失ってしまった。
 遠のいて行く意識の中、うっすら見えたのは、見覚えのある顔だった……。



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